自社株の相続対策できていますか?
こんにちは、岸和田事務所の司法書士 飴野圭一です。
今年の4月1日から相続登記の義務化が始まり、少しずつですが、相続についてのお問い合わせも増えてきています。この義務化の制度は、4月1日以前の相続についても適用されますのでご注意ください。
本日は、中小企業の株式の相続について対策が必要な理由についてお話させていただきます。
後継者以外の子供に相続させると~
親として子供に相続財産の分配を考えるとき、株式も「平等に分けたい」「娘に会社の経営を任せるが、息子にも株式を相続させたい」と他の財産と同様に考えがちです。皆が会社に協力的であれば問題ありません。しかし、仲が悪くなったり、欲が出てくると、株主の権利を行使して、経営に口出ししたり、配当金を過剰に要求したり、会社に株式を買い取ってくれと請求してくる可能性があります。(会社に余裕があればいいのですが)
また、更に相続が発生し、会社と全く関係のない親族の株主が増えると上記のような株主が増えることになるかもしれません。
こうなってしまうと、後継者の社長が株主対策に苦労することになります。
大株主の社長がお亡くなりになると~
オーナー社長がお亡くなりになると、社長個人の財産と共に株式も相続の対象になります。相続税は、被相続人の総資産額に対して課税されます。
株式の評価額は、出資した金額と同額ではありません。実際どれくらいになるかは税理士の先生に依頼することになりますが、会社の資産を基に評価額を算出しますので、かなりの高額になると思われます。その金額に相続税がかかるので納税するための現金を準備しなければなりません。中小企業のほとんどが、株式の譲渡制限の規定を設けていますので、他人に売って現金化することは難しいでしょう。また出来た場合でも、他人に株式が渡ってしまうことになるので経営にも影響が及んでしまうことになります。
定款に「相続人に対する株式売渡請求の定め」がある場合~
定款に「相続人に対する株式売渡請求の定め」があれば、株主が亡くなった時に、その相続人に対して会社が株式を買い取ることを請求できるので、株式を集約することが出来ます。しかし、次のようなデメリットも考えられます。
大株主のA社長が90%、B取締役が10%の株式を保有しており、Aは自分が死んだら息子のC部長に株式を相続させ次の社長にしたいと考えていた。しかし、B取締役がA社長の死亡を機に、会社乗っ取りを考え、会社として株式の売渡請求を行使して、Cの株式は会社が所有者となり、Cは株主にも後継者になることが出来なかった。
最後に
不安になることばかりお話ししましたが、事前に、株式の生前贈与、種類株式の発行、定款変更などの対策を講じれば円滑な親族内承継に近づけることは可能です。但し、個人の相続対策より時間がかかることが予測されますので、自社株の相続対策をご検討の方は、お早めにC-firstにご相談ください。