相続登記義務化に伴う国民の皆様の負担軽減についての件
皆様こんにちは、岸和田事務所の司法書士山﨑聡です。
前回のメルマガでは、相続登記義務化についてのお話をさせていただきました。
相続登記の義務化のお話を耳にされたことのある皆様は、「放っておいたらペナルティを課せられるらしい。」
とか「登記を放っておいたら10万円も徴収されるらしい」とか負担のことばかり頭に残っていて、
具体的な相続手続きについては、結局調べず、慌てて司法書士事務所に駆け込んで来られる方も多くいらっしゃいます。
今回は、相続登記の義務化に伴って、国民の皆様が自力で相続手続きをやるために今までよりも負担が軽減されたことのお話をさせていただきたいと思います。
一つ目は「相続人申告登記」です。
「相続人申告登記」については、2024年4月1日から始まります。こちらについても、前回のメルマガで詳しく説明しておりますので、ここでの詳細の説明は割愛させていただきます。
「相続人申告登記」はいわゆる、「相続登記」ではありません。あくまで上述のペナルティを課せられないための、相続人救済措置として相続登記義務化と同時に新たに設けられた制度です。
「相続人申告登記」は、自分自身以外に複数兄弟姉妹がいる場合で、疎遠な関係にある場合のように、なかなか相続人が集まって話ができない場合でも、申告者自身が相続人であることの証明ができれば(戸籍謄本等)、
それを不動産の所在を管轄する法務局に申し出ることで、登記官が職権で申告者が相続人である旨の登記をしてくれる制度です。その際に税金は一切かかりません。
これに対して、いわゆる「相続登記」であれば、現在の相続人が何人いるのか持分はどれくらいなのかを決める必要がありますので、不動産の登記名義人である被相続人の出生から死亡まで戸籍除籍謄本や
相続人全員の戸籍謄本や住民票等を取り寄せて添付する必要があります。その作業は、時間と費用がかかりますし、相続人一人では取れない戸籍謄本(世帯が別の兄弟の戸籍謄本等)もでてきます。
また、申請には不動産の固定資産税の評価額の0.4%の税金を原則、収入印紙で納める必要があります。
結局、不動産を相続で取得したことを知った日からもうすぐ3年が経ちそうな場合は、とりあえず「相続人申告登記」をしてペナルティを課せられないように自身の精神的不安を軽減する方法として今後の活用が期待されます。
二つ目は、戸籍謄本広域交付制度です。
こちらは、一足早く2024年3月1日から施行された改正戸籍法(令和元年5月24日成立)の運用によるものです。
これまでは戸籍謄本を自分自身で取得しようと思うと、本籍地を管轄する市町村に出向いて又は郵送で請求する方法しかありませんでした(マイナンバーカードで最寄りのコンビニで戸籍住民票を取ることも市町村によってはできます)。
独身であったり、親と同居しているような場合は、自分自身の戸籍謄本を近くの市町村で取ることは容易かもしれませんが、結婚して親元から離れていたり、転勤族であったりする場合は、本籍地を結婚又は引っ越す度に自分自身の居住地に移しているマメな方以外は、親の本籍地のままであったり、先祖代々そのままであったりするので、簡単に本籍地のある市町村に出向いて戸籍謄本を取得することはできません。
それが、2024年3月1日からは、ご自身のお住まいの最寄りの市町村や出張先の市町村等全国どこの市町村役場でも申請者自身の戸籍謄本を取ることができるようになりました。
先ほどの「相続人申告登記」では、申告に必要な書類は、ご自身の戸籍謄本くらいで済みますので、その戸籍謄本が最寄りの市町村役場で取得できればその後の手続きがとてもスムーズになるはずです。
年金の手続きや生命保険の手続きも、基本的には亡くなった方の戸籍謄本(死亡届が必要な場合もあります)と申請人の戸籍謄本をそろえるだけで手続きは完結できますので、戸籍謄本広域交付制度は国民の皆様の手続きの負担軽減につながる制度だと思います。
ただ、ここで注意しなければいけないのは、この戸籍謄本広域交付制度が使えるのは、戸籍の情報がコンピュータ化(平成6年から順次全国の市町村で開始)されたものに限られます。昔の手書きで書かれたものを印刷したような除籍謄本や改製原戸籍謄本は広域交付制度の対象外です。
申請者は、ご自身(配偶者や祖父母や両親、子孫)の戸籍謄本を直接最寄りの市町村の窓口に出向き、写真付きの本人確認書類(運転免許所やマイナンバーカード、パスポート等)の提示をして取得することになりますので、兄弟姉妹の戸籍謄本やそれ叔父叔母や甥姪等関係の離れた方の戸籍謄本は取れませんし、郵送で取得することもできません。また、あくまで謄本が対象になりますので、謄本の一部を証明する抄本も広域交付の対象にはなりません。
郵送や我々専門家が代理人として戸籍謄本や抄本を請求する場合は、今まで通り、本籍地を管轄する市町村に請求する必要があります。住所の沿革が記載されている戸籍の附票という証明書がありますが、こちらも広域交付制度の対象ではありませんので、これらの書類をそろえて申請することの多い相続登記やそれ以外の相続手続きについては、是非我々専門家である司法書士法人C-firstにご相談ください。